皆さん給与明細書を覗いてみて下さい、大半の方の明細書には支給額から控除される項目の中に所得税(源泉所得税)以外に住民税(特別徴収税)の項目があるでしょう。
そうこの二つがサラリーマン(給与所得者)に対する直接の税金なのです。
これは所得税が国に納める税金(国税)で、住民税が都道府県及び市町村に納める税金(地方税)であり、税金を納める相手が違うために分かれているのです。
ところで皆さん個人の住民税とはどのようなものでしょうか。
所得税は給与等から天引きした税金を年末調整などのときに税務署の用紙に保険料等を記載したりして給与の支払い者(以下「会社等」といいます)が計算してくれているのはわかりますよね。
住民税も会社等が計算してくれているのでしょうか。
いえ違うのです。
この違いを次から説明していこうと思います。
サラリーマンの所得税は月々の給与や賞与から各人が提出した『給与所得者の扶養控除等申告書』を基に法律で定められた計算方法(税額の一覧表等)により会社等が税額を算定し給与等から源泉徴収し国に納めています。
また一年間の所得税額の精算として年末調整があり、年末調整にて計算できない医療費控除等は確定申告にて申告することができます。
皆さんが毎年記載している『給与所得者の扶養控除等申告書』や『給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書』その他の提出書類は会社等を経由して税務署へ提出(実際は会社等が保管)する申告書となっており、その申告を基に税額を計算(会社等が代行)して国に納付しているのです。このことを申告納税方式といいます。
(※)『給与所得者の扶養控除等申告書』 : 所得税の計算上必要な人
及び家族等の事項や状態を記載するものです。
『給与所得者の保険料控除申告書』 :
本人が支払った生命保険・
損害保険・社会保険料その他の保険料を記載し計算するもので
す。
『給与所得者の配偶者特別控除申告書』
: 配偶者の所得により
動する配偶者特別控除を算定するものです。
ところで住民税はどうでしょう、上記のような申告書を住民税のために記載して市役所や会社等に提出した覚えはあるでしょうか、あるわけはないですねなぜなら住民税には給与所得者に対しての上記のような申告書(注)はないのですから、ではどのようにして税額が計算されるのでしょうか?
皆さんは年末調整後に会社等から『給与所得者の源泉徴収票』をもらわれているでしょう。これと同じ様式の書類『給与支払報告書』を会社等が作成(実際は役所から送られてくる書類では複写式となっています)し、これを給与所得者各人のその年の1月1日現在における住所所在地の市町村に提出しているのです。
各市町村はこの『給与支払報告書』を基に地方税法その他の法令に基づき独自に算定して市町村民税を課しているのです。
道府県民税についても同様ですが、その徴収についてはその道府県内に属する市町村がその道府県の道府県民税を市町村民税と併せて徴収するのことになっています。
このように個人の住民税は各個人が税額を算定してその税額を申告するのではなく、計算の基礎となる資料を市町村、都道府県が収集して住民税を算定し、その税額を賦課しているのです。このことを賦課課税方式といいます。
注) 住民税においても市町村・都道府県の確定申告書というものはありますが、その記載事項は通常各計算の基となる事項それぞれについて記載するもので所得税の確定申告書のように最終税額までの計算をするものではありません。
ただし、統一した様式での申告書ではないので最終税額まで計算する申告書の市町村もあるかもしれません。
住民税はいつ支払うのでしょうか?
皆さん思い出してください。学校を卒業し就職して初めてお給料を貰った時のことを。きっと明細書に記載されている項目と金額をしっかりと確認したことと思います。
そのときに気のつかれた方はいるでしょうか、所得税は引かれているのに住民税の欄には金額がなく引かれていないことを。そして1年が経過し2年目の6月から住民税の欄に金額が記載されてその分手取りが少なくなってしまったことを。
住民税は@に記載したように1年間の給与について、会社等が市町村に『給与支払報告書』を提出し、それを基に市町村が住民税を計算するため、前年の所得について翌年に住民税を支払うことになります。通常は翌年6月以降の給与等から月々徴収されることになります。
会社等はその徴収した住民税を、原則として翌月10日までに各市町村に支払わなければなりません。
このように会社等が個人(納税義務者)から住民税を徴収して市町村に支払うこと特別徴収といいます。
これまで説明しましたように所得税は月々の給与等から前払いで税金を支払って、その後に一年間の税金を精算しているのに対して、住民税は(退職所得を除き)前年の所得に対して翌年の月々の給与等から支払う後払いの方法によっているのが大きな違いです。
月々天引きされている住民税ですが、退職して給与等がなくなったらどうなるのでしょうか、もちろん見出しに書いたように支払わなくてよくなる訳ではありません。
住民税はAで説明したように前年の所得に対して税金が算定されるわけですから、最初から税金の総額が判っているのです。ですからその総額から退職までの給与から、天引きされた金額を差引した残額については、いろいろな取り決めはあるのですが、次のいずれかの方法により支払うことになります。
@)その残額について直接個人が市町村に支払う。(普通徴収とい
います)
A)最終の給与又は退職金からその残額の全部を会社等が徴収し
て市町村に支払う。
B)次に入社する会社等にその残額を引継ぎ新たな会社等が給与
等から天引きして支払う。
今回はサラリーマン(給与所得者)に限定し、具体的な計算方法を割愛していますので説明の足りないところがありますがご容赦ください。
住民税については所得税の計算方法に準拠した方法により算定されていますが、まだまだ所得税と違うところもあり、たとえば扶養控除の対象となるのに住民税が課されたり、給与所得以外の所得について徴収方法を替えたり等住民税独自の規定がありますので機会があればまたがんばってみようと思います。
(KN)